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その34 「死んだら御免」

子どものころ、こんなことを言った覚えはないだろうか。
「指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲ます」
この後に「死んだら御免」と続く。
約束した以上、命ある限り、約束を果たすのが当たり前。
こんな覚悟を示したものだった。

イメージ若い読者のために解説をしたい。
まず、「指切り」。小指と小指を絡めて何回か振る。
ヤクザなら約束を違えると即指を切り落とす。
子どもたちはこれを遊戯化した。

江戸時代、吉原の遊女たちは
贔屓客のために何回か、この指切りをした。
「主(ぬし)さんだけが頼り。誠の気持ちをみせますえ」
とか何とか言って、5,6回、指を切り落とす。
正確には、そのつど、その振りをした。
晒しにくるんだ小指はよそからの調達物、
指には包帯をしてあるから気付かれる心配はない。

でも本来の約束事は、そんなものではない。
だから、約束を破ったら
げんこつを1万回くらわせるぞ、
針を1000本飲ませるぞ、といった。
まさに生き死に、を賭けたのだ。

それでも、大人たちの間の約束事は、
時に、薄っぺらな紙のように容易に破られた。
破らざるを得ない事情があったかもしれない。
その時は死んでお詫びをするのが当たり前だった。

子供たちの遊びに残っている「死んだら御免」。
その意味は、死んでしまったら知らない、ではない。
江戸の人々の思いはもっと重い。

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